薬物による内耳障害で障害年金をもらう方法
聴覚の障害
【もくじ】
薬物中毒による内耳障害とは、ストレプトマイシン・ネオマイシン・カナマイシンなどの薬の副作用で内耳が障害される病気です。
難聴や耳鳴り、めまいやふらつきなどの症状が出ます。
薬物中毒による内耳障害が出現した場合は、薬の服用をやめると症状はおさまることが多いです。
薬物による内耳障害は障害年金の対象です
薬物による内耳障害の原因
薬物中毒を起こして内耳障害をもたらす薬は多く存在します。
代表的なものは、ストレプトマイシン・ネオマイシン・カナマイシン・アミカシン・バイオマイシン・ゲンタマイシン・トブラマイシン・バンコマイシン・抗腫瘍薬・エタクリン酸・フロセミド・サリチル酸塩・キニーネなどです。
このように、薬物中毒で内耳障害を引き起こす可能性のある薬物を、「聴器毒性がある」といいます。
薬物によって内耳障害が発生するかどうかは以下の要因が関係してきます。
・服用した容量
・服用期間
・腎機能が低下しているかどうか
・家族の既往など遺伝的関係性
・聴器毒性のある薬を複数同時に服用しているかどうか
以上のようなさまざまな原因が重なって内耳障害を引き起こします。
聴器毒性がある薬を飲んだからといって必ず内耳障害になるわけではありません。
医師の処方通りに薬を飲むことを心がけましょう。
薬物中毒による内耳障害の症状
薬物中毒による内耳障害の症状では、難聴や耳鳴り、めまいやふらつきなどが一時的または永続的に生じます。
特に、回転性めまい(あたかも周囲の風景が回転しているように感じること)やふらつきが強いのが特徴で、歩くのもやっとのような状態になります。
薬物中毒による内耳障害の予後
内耳障害が出現した場合は、薬の服用をやめると症状はおさまることが多いといわれています。
しかし、まれに難聴や耳鳴り、めまいやふらつきなどが永続的に後遺症として残ることがあります。
薬物中毒による内耳障害は障害年金の対象です
薬物中毒といっても、違法薬物の故意使用によって生じた障害については、認定の対象になりません。
この場合の薬物は、抗菌薬や癌の化学療法薬など、あくまで治療の過程で用いた薬物を指します。
また、一過性の症状も認定の対象にはなりません。
MSDマニュアル 家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/19-耳、鼻、のどの病気/内耳の病気/薬を原因とする耳の障害
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/16-耳鼻咽喉疾患/内耳疾患/薬剤性聴器毒性
障害年金とは?
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、 受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
病気やけがで初めて医師または歯科医師の診療を受けたときに 国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。
障害基礎年金 | 【対象】 ・初診日が国民年金加入期間の方 ・初診日が、20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間の方 ・老齢基礎年金を繰り上げて受給している方は除く 【要件】参考:クリアすべき要件 ・保険料の納付要件を満たしていること ・20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、 納付要件不要 ・障害の状態が、障害等級表の1級または2級に該当していること 【支給額】参考:障害年金の金額 1級 1,020,000円 2級 816,000円 その他、子の加算あり |
障害厚生年金 | 【対象】 ・初診日が厚生年金保険加入期間の方 【要件】参考:クリアすべき要件 ・保険料の納付要件を満たしていること ・障害の状態が、障害等級表の1級から3級のいずれかに該当していること 【支給額】参考:障害年金の金額 1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級 2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級 3級 報酬比例の年金額(最低保障612,000円) その他、1,2級は配偶者の加算あり |
障害手当金 | 【対象】 ・初診日が厚生年金保険加入期間の方 ・国民年金、厚生年金または共済年金を受給している方を除く 【要件】参考:クリアすべき要件 ・保険料の納付要件を満たしていること ・初診日から5年以内に治って(症状が固定して)いること ・治った日に障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽いこと ・障害等級表に定める障害の状態であること 【支給額】参考:障害年金の金額 報酬比例の年金額×2(最低保障1,224,000円) |
薬物中毒による内耳障害の障害年金認定基準
主な症状は、聴力と平衡機能の低下が挙げられます。
聴覚の障害聴覚・平衡機能 の障害について、それぞれの基準と併合判定の方法をご確認ください。
聴覚の障害
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの |
2級 | ・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの ・身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの |
障害手当金 | 一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの |
平衡機能の障害
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 | |
国年令別表 | 2級 | 平衡機能に著しい障害を有するもの | |
厚年令 | 別表第1 | 3級 | 神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
別表第2 | 障害手当金 | 神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
聴覚の障害のうち、特に内耳の傷病による障害と平衡機能障害とは、併存することがあります。
「平衡機能に著しい障害を有するもの」とは?
四肢体幹に器質的異常がない場合に、 閉眼で起立・立位保持が不能又は開眼で直線を歩行中に10 メートル以内に転倒ある いは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度のものをいいます。
中等度の平衡機能の障害のために、労働能力が明らかに半減しているものは、3級と認定します。
中等度の平衡機能の障害とは、閉眼で起立・立位保持が不安定で、開眼で直線を10 メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通 す程度のものをいいます。
めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らか な異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを 必要とする程度のものは、併合判定参考表の8号と認定します。
併合認定
各障害について併合判定参考表における該当番号を求めた後、併合認定表による併合番号を求め、障害の程度を認定します。
参考記事:障害がいくつかある場合:併合(加重)認定
薬物中毒による内耳障害で障害年金を受給するためのポイント
障害認定基準にある通り、平衡機能の障害は1級の基準を設けておらず、2級も相当重症な状態にあることが予想されます。
初診日が国民年金の場合など障害基礎年金を請求する場合は、3級以下の等級がありません。
平衡機能障害に聴覚障害など他の合併症状を併せることで2級以上に該当するか、などある程度の目安をもとに手続きされることをお勧めします。
まとめ
突然聞こえが悪くなる場合はその症状を自覚しやすいですが、徐々に聞こえが悪くなる場合は、症状を自覚することが難しく対応が遅れるケースが少なくありません。
聴器毒性のある薬剤を使用している場合は、定期的なスクリーニング等で聞こえのチェックを行ってください。