咽頭・喉頭 摘出後後遺症で障害年金をもらう方法
音声又は言語機能の障害
【もくじ】
病気は、「悪いところを取り除けば元通り」とはいきませんよね。
手術をすることで、新たな障害に悩まされることもあります。
「咽頭・喉頭 摘出後後遺症」もその一つです。
今回は、「咽頭・喉頭 摘出後後遺症」で悩んでおられる方に、障害年金をもらう方法について紹介します。
障害年金の特徴や障害認定基準などを見ていただいて、自分が当てはまるかどうかをぜひチェックしてみてください。
咽頭・喉頭 摘出後後遺症について
咽頭摘出術は、主に咽頭がんの治療で行われます。
咽頭には上咽頭、中咽頭、下咽頭があり、どの部分をどれぐらい摘出するかで術後の後遺症がかなり違ってきます。
中咽頭、下咽頭を摘出した場合は、食べ物を飲み込む力(嚥下)が弱くなったり、正しく発音できなくなることもあります。
また喉頭までを摘出した場合は、喉頭に含まれる声帯もなくなってしまうので声が出せなくなります。
喉頭摘出後はその他、においを感じなくなったり埃や乾いた空気を直接吸い込みやすくなくなるなど様々な問題も発生します。
(気管と食道が完全に分かれてしまうため)
咽頭や喉頭を摘出することは、今まで当たり前のようにできていた「食べること」や「話すこと」が以前のようにできなくなってしまうことであり、これは「生活の質」が低下してしまう大きな問題です。
障害年金について
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、 受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
病気やけがで初めて医師または歯科医師の診療を受けたときに 国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。
障害基礎年金 | 【対象】 ・初診日が国民年金加入期間の方 ・初診日が、20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間の方 ・老齢基礎年金を繰り上げて受給している方は除く 【要件】参考:クリアすべき要件 ・保険料の納付要件を満たしていること ・20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、 納付要件不要 ・障害の状態が、障害等級表の1級または2級に該当していること 【支給額】参考:障害年金の金額 1級 1,020,000円 2級 816,000円 その他、子の加算あり |
障害厚生年金 | 【対象】 ・初診日が厚生年金保険加入期間の方 【要件】参考:クリアすべき要件 ・保険料の納付要件を満たしていること ・障害の状態が、障害等級表の1級から3級のいずれかに該当していること 【支給額】参考:障害年金の金額 1級 報酬比例の年金額×1.25+障害基礎年金1級 2級 報酬比例の年金額+障害基礎年金2級 3級 報酬比例の年金額(最低保障612,000円) その他、1,2級は配偶者の加算あり |
障害手当金 | 【対象】 ・初診日が厚生年金保険加入期間の方 ・国民年金、厚生年金または共済年金を受給している方を除く 【要件】参考:クリアすべき要件 ・保険料の納付要件を満たしていること ・初診日から5年以内に治って(症状が固定して)いること ・治った日に障害厚生年金を受け取ることができる状態よりも軽いこと ・障害等級表に定める障害の状態であること 【支給額】参考:障害年金の金額 報酬比例の年金額×2(最低保障1,224,000円) |
咽頭・喉頭 摘出後後遺症の障害年金認定基準
咽頭や喉頭を摘出すると「食べること」や「話すこと」に障害が起こります。
ここでは、咽頭・喉頭 摘出後後遺症で年金をもらうための認定基準を解説しますので、ご自身がどこに当てはまるかをチェックしてみてください。
そしゃく・嚥下機能の障害による障害認定基準
咽頭がんなどで咽頭を摘出した場合、食べ物を飲み込む力(嚥下)に障害が起こることがあります。
そしゃく・嚥下機能の障害による障害認定基準は、次の通りです。
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 | |
国年令別表 | 2級 | そしゃくの機能を欠くもの | |
厚年令 | 別表第1 | 3級 | そしゃくの機能に相当程度の障害を残すもの |
別表第2 | 障害手当金 | そしゃくの機能に障害を残すもの |
◇ そしゃく・嚥下機能の障害で1級に該当するものは原則ありません。
◇ 2級「そしゃく・嚥下の機能を欠くもの」
・流動食以外は接種できない
・口から食べ物を接種することができない、口から食べ物を接種することが困難
(食べ物が口からこぼれ出る、一日の大半を食事に費やす など)
◇ 3級「そしゃく・嚥下の機能に相当程度の障害を残すもの」
・口からだけでは十分な栄養が接種できないため栄養チューブでの接種が必要
・全粥または軟菜以外は摂取できない
◇ 障害手当金に該当する「そしゃく・嚥下の機能に障害を残すもの」
・ある程度の食べ物は摂取できるが、そしゃく・嚥下が十分できないため、食事が制限されるもの
音声又は言語機能の障害の認定基準
咽頭を摘出した場合、発音に障害が出ることがあります。
また、喉頭全摘出の場合は声帯の喪失によって、声を出せなくなってしまいます。
音声又は言語機能の障害の認定基準は次の通りです。
令別表 | 障害の程度 | 障害の状態 | |
国年令別表 | 2級 | 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの | |
厚年令 | 別表第1 | 3級 | 言語の機能に相当程度の障害を残すもの |
別表第2 | 障害手当金 | 言語の機能に障害を残すもの |
◇ 音声又は言語機能の障害で1級に該当するものは原則ありません。
◇ 2級「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」
・話すことができず、日常会話が誰とも成立しない
※喉頭を全摘出した場合は、障害等級が2級と判定され、障害年金をもらうことができます。
◇ 3級の「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」
・日常会話が、お互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つもの
◇ 障害手当金に該当する「言語の機能に障害を残すもの」
・日常会話が、お互いに確認することなどで、ある程度成り立つもの
※喉頭を全摘出するとにおいを感じなくなる場合がありますが、嗅覚がなくなる障害は、認定の対象にはなっていません。
併合認定
咽頭や喉頭を摘出した場合、嚥下機能と言語機能の両方に障害を抱えている方も多くいらっしゃると思います。
2つの障害を合わせて認定(併合認定)すると、障害等級が上がる可能性があります。
各障害について併合判定参考表における該当番号を求めた後、併合認定表による併合番号を求め、障害の程度を認定します。
参考記事:障害がいくつかある場合:併合(加重)認定
障害年金を受給するためのポイント
障害年金をもらうためには、ご自身の症状や困っていることを診断書で証明する必要があります。
診断書を書くのはお医者様なので、診断書をお願いする前にご自身の体の状態をしっかりと伝えておく必要があります。
言語障害がある場合は、「病歴・就労状況等申立書」などの文書で伝えるのも一つの方法です。
「病歴・就労状況等申立書」は障害年金の申請に必要な書類で、障害によって仕事や生活にどれだけ支障があるかをご自身で記入する書類です。
お医者様に診断書をお願いするときには、自分がどれだけ困っているかが伝わるように工夫してみてください。
また、診断書を書いてもらったら、記入漏れがないかをチェックしておいてください。
【 診断書チェックのポイント 】
聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用の診断書
⑧初診日は正しいか(障害の原因になった病気を初めてお医者様に診てもらった日になります)
⑨欄は詳しく記入されているか
診療回数は現症日前1年間における診療回数
入院日数1日は診療回数1回として計算
手術を行った場合は、その術名及び施行日の記載があるか
⑩障害の状態は現症日が記入されているか
⑩(4)欄、⑩(5)ア欄、⑩(5)イ欄がご自身の障害の状態に合っているか
⑩(5)イ欄発音検査を行った場合はかっこ内に検査結果が記入されているか
⑩欄に記入しきれない場合は別紙に記入
⑪欄は日常生活や労働で困っていることを詳しく記入してもらう
まとめ
咽頭摘出後後遺症で障害年金をもらう方法についてお伝えしました。
術後の後遺症で長い期間にわたってつらい思いをされている方も多くいらっしゃると思います。
障害年金をもらえるかもらえないか、また金額によっても生活の支えが大きく違ってきます。
ぜひこの記事で、障害年金を受給する方法やポイントを知っていただければと思います。