障害年金は何を基準に決めるの?(肝疾患)
肝疾患による障害
【もくじ】
「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」の内容を、まとめたものです。
本文は、日本年金機構のホームページをご参照ください。
認定要領
肝疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定します。
□ 肝硬変
〈肝硬変とは〉
肝疾患による障害の認定の対象は、慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態(食道・胃などの静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんを含む。)です。
〈最も多い肝硬変〉
◇B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスによるウイルス性肝硬変
◇自己免疫性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎による肝硬変
◇アルコール性肝硬変:継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことについて、確認のできた者に限り、認定を行う。
◇胆汁うっ滞型肝硬変
◇代謝性肝硬変(ウィルソン病、ヘモクロマトーシス)等
〈主要症状〉
易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚そう痒感、吐血、下血、有痛性筋痙攣等の自覚症状、肝萎縮、脾腫大、浮腫、腹水、黄疸、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤、肝性脳症、出血傾向等の他覚所見
〈検査〉
血球算定検査、血液生化学検査、肝炎ウイルス検査、血液凝固系検査、免疫学的検査、超音波検査、CT・MRI検査、腹腔鏡検査、肝生検、上部消化管内視鏡検査、肝血管造影等
〈重症度判定〉
検査項目/臨床所見 | 基準値 | 中等度の異常 | 高度異常 |
血清総ビリルビン (mg/dl) | 0.3~1.2 | 2.0以上3.0以下 | 3.0超 |
血清アルブミン (g/dl) (BCG法) | 4.2~5.1 | 3.0以上3.5以下 | 3.0未満 |
血小板数 (万/μl) | 13~35 | 5以上10未満 | 5未満 |
プロトロンビン 時間(PT)(%) | 70超~130 | 40以上70以下 | 40未満 |
腹水 | ― | 腹水あり | 難治性腹水あり |
脳症(昏睡度分類表参照) | ― | Ⅰ度 | Ⅱ度以上 |
〈昏睡度分類〉
昏睡度 | 精神症状 | 参考事項 |
Ⅰ | 睡眠―覚醒リズムに逆転。 多幸気分ときに抑うつ状態。 だらしなく、気にとめない態度。 | あとで振り返ってみて判定できる。 |
Ⅱ | 指南力(時、場所)障害、 物をとり違える(confusion) 異常行動 (例:お金をまく、 化粧品をゴミ箱に捨てるなど) ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し会話が出来る) 無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度を見せる。 | 興奮状態がない。 尿便失禁がない。 羽ばたき振戦あり。 |
Ⅲ | しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる。 嗜眠状態(ほとんど眠っている)。 外的刺激で開眼しうるが、他人の指示には従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)。 | 羽ばたき振戦あり。 (患者の協力がえられる場合) 指南力は高度に障害。 |
Ⅳ | 昏眠(完全な意識の消失)。 痛み刺激に反応する。 | 刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる。 |
Ⅴ | 深昏睡 痛み刺激にもまったく反応しない。 |
〈一般状態区分表〉
区分 | 一般状態 |
ア | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの |
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
エ | 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
オ | 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの |
障害の程度
〈等級の目安〉
障害の程度 | 障害の状態 |
1級 | 〈重症度判定〉の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、〈一般状態区分表〉のオに該当するもの |
2級 | 〈重症度判定〉の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、〈一般状態区分表〉のエ又はウに該当するもの |
3級 | 〈重症度判定〉の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を2つ以上示すもので、かつ、〈一般状態区分表〉のウ又はイに該当するもの |
肝硬変以外の疾病
◆慢性肝炎
原則として認定の対象としないが、〈等級の目安〉にある障害の状態に相当するものは認定の対象とする。
◆食道・胃などの静脈瘤 特発性細菌性腹膜炎
吐血・下血の既往、治療歴の有無及びその頻度、治療効果を参考とし、〈重症度判定〉の検査項目及び臨床所見の異常に加えて、総合的に認定する。
◆肝がん
〈重症度判定〉の検査項目及び臨床所見の異常に加えて、肝がんによる障害を考慮し、肝疾患による障害及び悪性新生物による障害の認定要領により認定する。
〈重症度判定〉の検査項目及び臨床所見の異常がない場合は、悪性新生物による障害の認定要領により認定する。
◆肝臓移植
術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。
障害年金を支給されている者が肝臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。
他の障害との併合について
肝疾患による障害は他の障害と併存することもあります。
その場合は、併合認定(それぞれの障害等級を併せて認定する)の扱いとなります。
単独で認定されている方は、見直すことで上位等級に変更される可能性があります。
参考記事:障害がいくつかある場合:併合(加重)認定