咽頭・喉頭 摘出後後遺症で障害年金をもらう方法
病気は、「悪いところを取り除けば元通り」とはいきませんよね。
手術をすることで、新たな障害に悩まされることもあります。
「咽頭・喉頭 摘出後後遺症」もその一つです。
今回は、「咽頭・喉頭 摘出後後遺症」で悩んでおられる方に、障害年金をもらう方法について紹介します。
障害年金の特徴や障害認定基準などを見ていただいて、自分が当てはまるかどうかをぜひチェックしてみてください。
【もくじ】
咽頭・喉頭 摘出後後遺症について
咽頭摘出術は、主に咽頭がんの治療で行われます。
咽頭には上咽頭、中咽頭、下咽頭があり、どの部分をどれぐらい摘出するかで術後の後遺症がかなり違ってきます。
中咽頭、下咽頭を摘出した場合は、食べ物を飲み込む力(嚥下)が弱くなったり、正しく発音できなくなることもあります。
また喉頭までを摘出した場合は、喉頭に含まれる声帯もなくなってしまうので声が出せなくなります。
喉頭摘出後はその他、においを感じなくなったり埃や乾いた空気を直接吸い込みやすくなくなるなど様々な問題も発生します。
(気管と食道が完全に分かれてしまうため)
咽頭や喉頭を摘出することは、今まで当たり前のようにできていた「食べること」や「話すこと」が以前のようにできなくなってしまうことであり、これは「生活の質」が低下してしまう大きな問題です。

https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/649273.pdf
障害年金について
障害年金は老齢年金とは違い、若い人でも障害の程度によって支給されます。
つまり、病気やけがによって生活や労働にどれぐらい支障があるかが、障害年金をもらえるかもらえないかの大きなポイントになります。
1. 障害年金の種類
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。
どちらをもらうかは、障害の原因になった病気やけがで、初めてお医者様の診察を受けた日(初診日)で決まります。
初診日に、国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」をもらうことができます。
※初診日が「20歳より前の期間」または「60歳以上65歳未満で日本に住んでいる期間」に当たる場合は、年金を払う義務がないので加入していなくても大丈夫です。
2. 障害基礎年金と障害厚生年金の違い
◆ 障害基礎年金
初診日に、国民年金に加入していた方は、障害基礎年金をもらうことができます。
障害の程度によって、1級と2級に分かれています。
◆ 障害厚生年金
初診日に、厚生年金に加入していた方は、障害厚生年金をもらうことができます。
障害の程度によって、1級、2級、3級に分かれています。
また、障害の程度が3級よりも軽い方は、病気やけがが治っている状態で一定の障害があれば障害手当金(一時金)をもらうことができます。

3. 障害年金をもらうためには
障害年金をもらうためには3つの条件をクリアしなければいけません。
3-1.初診日が証明できること
初診日は、「障害基礎年金」か「障害厚生年金」のどちらがもらえるのかを知るために必要です。
初診日がはっきりと分かっている方は、医療機関で受診状況等証明書を書いてもらいましょう。
また、受診状況等証明書を入手できない場合でも初診日を証明する方法があります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:障害年金の診断書に記入する初診日とは?
関連記事:障害年金の初診日が証明できない場合はどうしたら良いの?
3-2.保険料が払えていること
初診日の前日までの一定期間に、国民年金または厚生年金の保険料を払っていないと、障害年金をもらうことはできません。
(※20歳前に初診日がある方は保険料を払っていなくても大丈夫です)
下の図のどちらかに当てはまれば、障害年金を請求することができます。
市役所や年金事務所などで納付状況を確認しておいてください。

3-3.一定の障害状態であること
障害年金は、障害の程度によって支給されます。(身体障害者手帳の等級とは異なります)
障害の程度は、1級、2級、3級に分かれていてどれかに認定されないと障害年金をもらうことはできません。
詳しくは、「咽頭摘出後後遺症の障害年金認定基準」で解説します。
4. 障害年金はいつからもらえる?
障害年金を請求するときに、いつの分から請求できるかを知っておくことが大切です。
◆ 認定日請求
障害認定日(初診日から1年6ヶ月を過ぎた日※例外あり)の時点で障害状態であれば、障害認定日の翌月から障害年金をもらうことができます。
過去にさかのぼって障害年金を請求することができるので、可能であれば認定日当時の診断書を取得してください。
※喉頭全摘出の場合は初診日から1年6ヶ月過ぎていなくても、全摘出した日が障害認定日になります。
発音に関わる機能を喪失した場合は、障害年金2級に該当します。
障害認定日の翌月から年金をもらうことができるので、早めに申請することをおすすめします。
◆ 事後重症請求
障害認定日に障害状態に当てはまらず、その後症状が悪化して障害状態になった場合は、請求月の翌月から障害年金をもらうことができます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:障害年金をもらうためにクリアしなければならない要件
咽頭・喉頭 摘出後後遺症の障害年金認定基準
咽頭や喉頭を摘出すると「食べること」や「話すこと」に障害が起こります。
ここでは、咽頭・喉頭 摘出後後遺症で年金をもらうための認定基準を解説しますので、ご自身がどこに当てはまるかをチェックしてみてください。
1. そしゃく・嚥下機能の障害による障害認定基準
咽頭がんなどで咽頭を摘出した場合、食べ物を飲み込む力(嚥下)に障害が起こることがあります。
そしゃく・嚥下機能の障害による障害認定基準は、次の通りです。

◇ そしゃく・嚥下機能の障害で1級に該当するものは原則ありません。
◇ 2級「そしゃく・嚥下の機能を欠くもの」
・流動食以外は接種できない
・口から食べ物を接種することができない、口から食べ物を接種することが困難
(食べ物が口からこぼれ出る、一日の大半を食事に費やす など)
◇ 3級「そしゃく・嚥下の機能に相当程度の障害を残すもの」
・口からだけでは十分な栄養が接種できないため栄養チューブでの接種が必要
・全粥または軟菜以外は摂取できない
◇ 障害手当金に該当する「そしゃく・嚥下の機能に障害を残すもの」
・ある程度の食べ物は摂取できるが、そしゃく・嚥下が十分できないため、食事が制限されるもの
2. 音声又は言語機能の障害の認定基準
咽頭を摘出した場合、発音に障害が出ることがあります。
また、喉頭全摘出の場合は声帯の喪失によって、声を出せなくなってしまいます。
音声又は言語機能の障害の認定基準は次の通りです。

◇ 音声又は言語機能の障害で1級に該当するものは原則ありません。
◇ 2級「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」
・話すことができず、日常会話が誰とも成立しない
※喉頭を全摘出した場合は、障害等級が2級と判定され、障害年金をもらうことができます。
◇ 3級の「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」
・日常会話が、お互いに内容を推論したり、たずねたり、見当をつけることなどで部分的に成り立つもの
◇ 障害手当金に該当する「言語の機能に障害を残すもの」
・日常会話が、お互いに確認することなどで、ある程度成り立つもの
※喉頭を全摘出するとにおいを感じなくなる場合がありますが、嗅覚がなくなる障害は、認定の対象にはなっていません。
3. 併合認定
咽頭や喉頭を摘出した場合、嚥下機能と言語機能の両方に障害を抱えている方も多くいらっしゃると思います。
2つの障害を合わせて認定(併合認定)すると、障害等級が上がる可能性があります。
例-1
そしゃく・嚥下機能の障害で2級2号、音声又は言語機能の障害も2級2号だった場合、下の表から併合認定番号は1号になります。
認定番号1号は障害等級1級に当たるので、2級よりも多い金額の障害年金をもらうことができます。


例-2
そしゃく・嚥下機能の障害、音声又は言語機能の障害がともに障害厚生年金3級に該当する3級6号であった場合は、併合認定で障害厚生年金2級に認定されます。
例-3
そしゃく・嚥下機能の障害、音声又は言語機能の障害がともに障害手当金に該当する3級9号であった場合は、併合認定で障害厚生年金3級に認定されます。
「食べること」、「話すこと」の両方に障害を抱えることは、生活をする上でとても大変な問題です。
より多くの障害年金がもらえると、生活の大きな支えになりますので、併合認定についてもぜひチェックしてみてください。
障害年金を受給するためのポイント
障害年金をもらうためには、ご自身の症状や困っていることを診断書で証明する必要があります。
診断書を書くのはお医者様なので、診断書をお願いする前にご自身の体の状態をしっかりと伝えておく必要があります。
言語障害がある場合は、「病歴・就労状況等申立書」などの文書で伝えるのも一つの方法です。
「病歴・就労状況等申立書」は障害年金の申請に必要な書類で、障害によって仕事や生活にどれだけ支障があるかをご自身で記入する書類です。
お医者様に診断書をお願いするときには、自分がどれだけ困っているかが伝わるように工夫してみてください。
また、診断書を書いてもらったら、記入漏れがないかをチェックしておいてください。
【 チェックのポイント 】
⑧初診日は正しいか(障害の原因になった病気を初めてお医者様に診てもらった日になります)
⑨欄は詳しく記入されているか
診療回数は現症日前1年間における診療回数
入院日数1日は診療回数1回として計算
手術を行った場合は、その術名及び施行日の記載があるか
⑩障害の状態は現症日が記入されているか
⑩(4)欄、⑩(5)ア欄、⑩(5)イ欄がご自身の障害の状態に合っているか
⑩(5)イ欄発音検査を行った場合はかっこ内に検査結果が記入されているか
⑩欄に記入しきれない場合は別紙に記入
⑪欄は日常生活や労働で困っていることを詳しく記入してもらう


まとめ
咽頭摘出後後遺症で障害年金をもらう方法についてお伝えしました。
術後の後遺症で長い期間にわたってつらい思いをされている方も多くいらっしゃると思います。
障害年金をもらえるかもらえないか、また金額によっても生活の支えが大きく違ってきます。
ぜひこの記事で、障害年金を受給する方法やポイントを知っていただければと思います。